ドラマ『ROME(ローマ)』全22話を観た私の感想と深掘り考察

    HBO制作の歴史ドラマ『ROME(ローマ)』。全22話にわたる壮大な古代ローマ叙事詩を見終えた今、私の胸に残ったのは「人間の業の深さ」そして「時代を超えて通じる普遍的な人間模様」でした。男と女がいつも争っています。

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    人間は愛憎劇を繰り返すのかも

    ROME ローマ ドラマ 考察

    決して古代の話では済まされない、いつの時代も人間は変わらないのだなと思わされる『ROME』でした。私は某ドラマを連想させます。それが『ゲーム・オブ・スローンズ(GOT)』。これが好きな人にはたまらない世界観とストーリーです。ファンタジー要素こそないものの、政治、裏切り、愛憎、そして血と欲望が複雑に絡み合ったストーリーはまさに“リアルな古代ローマGOT”と言えるかもしれません!

    史実を土台にした濃密な人間ドラマ

    『ROME』は、共和政末期から帝政への移行期を舞台に、歴史的に実在した人物たち(ユリウス・カエサル、クレオパトラ、マルクス・アントニウス、オクタヴィアヌスなど)と、架空の登場人物(平民のプッロとウォレヌス)を交錯させながら、綿密に構成された歴史ドラマです。登場人物が多すぎないので、安心して観れるのもいいなと思いました。これ、ゲーム・オブ・スローンズを観たことがある方なら意味がわかるはずです。

    ともかく、史実に基づいて、ユリウス・カエサルの暗殺、アントニウスとクレオパトラの関係など、誰もが一度は名前を聞いたことがある出来事が映像としてリアルに描かれます。CGに頼りすぎず、衣装やセットも非常にリアルで、ローマの空気感が伝わってきます。非常に良くできたドラマだと思います。大好きです。

    プッロとウォレヌス──2人の兵士の物語

    プッロ(Titus Pullo)とヴォレヌス(Lucius Vorenus)は、史実にも登場するカエサル軍の兵士の名を借りた架空の主人公たち。プッロは血気盛んで粗野ながら人間味あふれるキャラクターです。彼は始めの頃こそ粗暴でどうしようもない孤独な暴力男でしたが、ヴォレヌスとの友情が彼を変えたようにも見えました。人間関係の成長を象徴するキャラとして、すごく魅力的です。

    対してヴォレヌスは、義と秩序に生きる堅物のローマ市民兵。とてつもなく真面目な男。声がいい。百人長なだけあるなと、威厳に溢れた人です。そんなプッロとヴォレヌスという2人の対照的なキャラクターが友情を築き、政治と戦争の渦に巻き込まれていく姿は、このドラマの大きな軸となっています。

    強烈な女たち──アティアとセルウィリア

    女性キャラも見どころです。アティア(カエサルの姪、オクタヴィアヌスの母)は常に自分が中心でなければ気が済まない野心的な女性。ゲーム・オブ・スローンズのサーセイに例えられることも多い、どこまでも気高く、しかし奸計ばかりで、とにかく恐ろしい存在感。

    対して、セルウィリア(ブルータスの母、カエサルの愛人)は貴婦人から、復讐心に燃える女へと変化していきます。この人こそ怖いなと私は思いましたけれどね。SNSでも、最初こそセルウィリアに共感していた人も多かったものの、息子や周囲を利用し陰謀に走る様子には「最も嫌われたキャラ」とまで言われています。ただし、演技力は高く評価されており、「誇りと激情の化身」との声もありました。

    クレオパトラとアントニウス──破滅への愛

    ROME ローマ ドラマ 考察

    クレオパトラは、美貌と政治的野心を武器にローマの男たちを翻弄する存在として描かれます。これは私の意見ですが、彼女は特別に美人ではないと思います。ただ、とにかくふしだらで猫のようなところが、浅ましくもあり魅力に見えたのでしょうか・・・。女の武器でアントニウスを虜にし、二人の関係はやがて破滅の道へ。

    面白いなと思ったのは、クレオパトラが自死に行き着くまでの流れの早さ。どこまでも生にしがみついているような女性に見えたのですが、終盤でのオクタヴィアヌスと対面したシーンでは、たった少しの会話ですべてを悟ったかのようで見応えがありました。

    オクタヴィアヌスの“優しげな口調の裏にある恐怖”を感じ取ったかのように、クレオパトラは死を選びます。決して、アントニウスを追っての死ではない気がします。愛してはいたのでしょうけれど。

    一方でクレオパトラに溺れたアントニウスは、元は武勇とカリスマを兼ね備えながら、酒と女に溺れ、自滅していく姿が痛々しいです。とはいえ、ドラマ前編で羊飼いの女性を犯すシーンは、彼の“性と暴力”への執着を象徴しており、なんとも下品で自己中心的な印象を見せつけられたように思えます。そんな彼が、性と暴力で溺れていく流れは、なんとも無常さを感じさせられました。

    尊厳者としての皇帝

    私がこのドラマで一番楽しみにしていた人物はオクタヴィアヌスです。結論、大満足でした。最初は可愛らしい少年でしたが、大人になってからは冷静で恐ろしく有能な指導者へと変貌します。彼がローマ初代皇帝“アウグストゥス”になる過程は見ごたえがあり、必見です。

    カエサルが遺言にて養子として選んだだけある、第二のカエサルそのものに。権威を担う彼の凄みと冷徹さには、ゾッとするほどでした。俳優さんもかなりいい感じです!

    ローマは現代にも通じる

    このドラマを通じて描かれるのは、単なる過去の出来事ではありません。奴隷制度の中で描かれる“精神的な隷属”、権力に踊らされる民衆、そしてどんなに強く見えても誰もがどこかでどん底を味わっているというリアルさは、現代社会そのもの。

    情事シーンは多いものの、それを売りにしているというよりも、堕落したローマ貴族たちの生活を描くための手法として機能しています。決して過剰ではありませんし、ストーリーのリアリティを損ねていないのがこれまた秀逸。「女、酒、権力、裏切り」──古代ローマが現代社会と重なって見える。そんな感覚を覚えた全22話でした。

    ですので、『ROME』は、古代史に興味がなくても楽しめます。むしろ詳しくなくても没入できる丁寧な作り。歴史を知らなくても、リアルな人間ドラマとして一級品。史実の“人間”を感じられる数少ない映像作品だと思います。

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