“日本人すごい”に惑わされないために ― 本物のアイデンティティーを取り戻す

    近年、耳にするのが「日本は特別ですごい(直訳的にいえば)」といった思想です。それは遺伝子であったり、ルーツであったり、神話における宇宙人とのつながりであったり。にわかには信じ難い話も多々あるのですが、本気で囚われてしまっている方も多くいます。そもそも、これを書いている私自身がかつてそうでした。視野を広げて、真実を見極めるためにもと思い、啓発をこめて記事にさせていただきました。

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    まず結論、ただの優越感です

    日本人すごい なぜ

    近年、スピリチュアル界隈で「日本人はすごいんだ」といった内容が取り上げられているように感じます。私はクリスチャンになる前、スピリチュアル(ニューエイジ)思想が大好きで、その界隈で仕事もしていました。確かに、この「日本人は特別だ」といった風潮は注目されましたし、人気でした。

    しかし、目が覚めたのです。聖書を通して、この思想がいかに不可解で危険なものなのか、一瞬にして価値観が大逆転させられたのです。日本人として、日本人に誇りを持つことは悪いことではありません。しかし、アイデンティティーのように、そして優生思想のように誇りに思っていることは、どう考えてもおかしいのだと。

    み言葉が開けると光を放って、 無学な者に知恵を与えます。

    旧約聖書 詩篇 119:130

    なぜ「日本人すごい」が流行るのか

    今からお伝えすることは、私の意見ではありません。あくまでも、ネットや書籍を中心に、スピリチュアル界隈で言われていることをまとめたものです。「日本人はすごい」のは、界隈的にはヤップ遺伝子、言霊、水の結晶、龍体列島説…根拠が曖昧な「特別視」として人気を博しています。


    1. ヤップ(YAP)遺伝子説

    日本人すごい なぜ

    日本人男性に多く見られる「YAP遺伝子」が、特別な霊性や能力に関係していると言われるのが、ヤップ(YAP)遺伝子説。科学的には「Y染色体ハプログループD(旧称:YAP+)」という分類で、単なる遺伝的特徴にすぎません。しかし、スピリチュアル界隈では「宇宙人由来」「選ばれし民族」「精神性が高い」のような話に発展しているというのが、客観的にみた上での説明となります。

    ちなみに、このY染色体の「ハプログループD1b(旧称:YAP+)」は、チベット人やアンダマン諸島の先住民にも多いと言われています。つまり、ユーラシア大陸の古い系統を受け継いでいるということ。つまり、大昔の人類移動の痕跡だということで、世界中どこでもいえることですね。島国の日本ゆえ、この説は珍しく感じる人もいるかもしれませんが、歴史的にみれば、日本は大きく言ってしまえば移民国家です。


    2. DNAが三重らせんになる説

    科学的には三重らせんDNAは実験上存在するのが前提です(人間の細胞レベルでは確認されていない)。しかし、スピリチュアル界隈では「日本人の眠っている能力が目覚める」とされています。こういったスピリチュアル解釈で説明すると、アセンション(次元上昇)が進むと眠っているDNAが活性化するということ。本来人間は12本のDNA鎖を持っているが、今は2本しか機能していないなど。そして言葉が飛躍し、「DNAが光を放っている」「魂の設計図が開く」など詩的に語られるわけです。つまり、論理的な裏付けはゼロ。ただし「人間にはまだ未知の可能性がある」というロマンにはつながりますね。


    3. 古代ユダヤ人・シュメール人とのつながり説

    日本人すごい なぜ

    血統がユダヤ人だと、「何だかすごい」というふうに見られるのが現代。いわば優生思想ですね。確かに、世界的に活躍されている著名人にはユダ人の割合は多いとされています。そして何よりも、聖書にはユダヤ人(イスラエル民族)が神様に愛されてきたことがわかります。しかし、それは旧約時代のお話であり、主イエス様が来られてからは、血による優勢は何の意味もなさないことがわかっています。

    しかし、スピリチュアル界隈では、ユダヤ人のルーツやら文化などを何かと日本と結びつけようとしています。たとえば、神道の祭祀や「鳥居」が、古代ユダヤの祭壇に似ていると指摘されています。確かに大陸から日本へ渡ってきた人がいるでしょう。しかし、それのどこが凄いのでしょうか?歴史を見れば、日本は移民国家です。かつてのユダヤ人が渡来してきて、子孫が繁栄していってもおかしくはありません。つまり、ユダヤと日本についての繋がるに関しては、諸々こじつけ感があります。

    また、伊勢神宮と契約の箱(アーク)を結びつける説もあります。これについて、旧約聖書を読めばわかることですが、見つかっていませんし、それが主の意図なのです。個人的な意見にはなりますが、イスラエル地方のどこかで、二度と人の手には渡らないように歴史から消えたのだと思っています。


    4. 天皇家=宇宙人の子孫説

    日本人すごい なぜ

    日本の天皇家は宇宙人の血を受け継いでいるという説です。そもそも、宇宙人が存在するのかどうかから議論されるべき問題ですよね。ただ、スピリチュアル界隈の人は、宇宙人が存在するのは当たり前とした前提があるので、この説はかなり納得されています。それこそ、人類はアヌンナキという宇宙人によって金の採掘のために奴隷として創造されたとか言われているくらいですから。しかし、クリスチャンの私から言わせてみれば、この説はすべておかしいです。神様は愛をもって、目的をもって人間を創造されました。

    ともかく、スピリチュアル界隈では、天皇は「天照大神の子孫」=地球に降り立った宇宙的存在の血筋と述べられています「プレアデス星団」「シリウス」から来た魂が、日本の皇統を守っているだとか、神社は宇宙のゲート(ポータル)として建てられているだとか。日本神話では「天孫降臨」により天皇家が地上に来たことが語られており、これを「宇宙人降臨」と読み替えているのです。これらもあって、「日本は特別」と信じてやまない方も多いのでしょう。

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    5. 言霊(ことだま)の力

    日本語は波動が高く、世界でも特別な「言霊の言語」という説です。「ありがとう」「愛してる」を唱えると水の結晶が変化するという江本勝氏の研究が有名ですね。科学的には批判も多いのですが、スピリチュアル界では根強い人気です。どうやら日本語の音には固有の波動があり、発する言葉が現実を形づくるという信仰です。「祈りや祝詞は現実を変える力を持つ」なんて言われていたり。

    また、「水は答えを知っている」の著者・江本勝氏の「水の結晶実験」では、「ありがとう」と書いた水の結晶は美しい形になるが、「ばかやろう」と書いた水は歪むと紹介されており、これを波動の影響と捉えているのでしょう。確かに、いい言葉・悪い言葉というのは存在します。それこそ、スピリチュアルな視点は一切関係なく。

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    6. 日本列島=龍体説

    日本人すごい なぜ

    日本列島は龍の形をしていて、霊的なエネルギーが流れる特別な土地だと言われています。「龍脈」「レイライン」と呼ばれるパワースポットの話につながるというのです。確かに、日本列島の形が龍に見えなくもありません。そこから発想されたのが、龍はエネルギーの象徴で、日本は龍の国と言われているのでしょう。ただし、聖書を研究する私から言わせてみれば、龍に関する歴史的文化は、世界各地に驚くほど多く存在しています。それもそのはず、聖書によれば龍はサタンの象徴ですから。

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    7. 日本人は魂レベルが高い説

    「日本人はもともと魂のレベルが高いから、悟りやすい」という思想から来ています。これまでの様々な説を兼ねて、優生思想な考え方と合わさってできた解釈なのでしょう。ひどい場合だと、第二次世界大戦や震災を「浄化のプロセス」と解釈する説すらあります。結構好き勝手に自己解釈をしている、実はかなり重度の説でもあります。

    この考えの根底にあるのは、「日本人は輪廻転生を多く経験してきた魂」「カルマが軽い」「悟りを得やすい」などの思想。また、日本の文化とマッチしているのかもしれませんね。日本人の勤勉さ、礼儀正しさ、調和を重んじる文化や、大震災の際に暴動が起きず、秩序が保たれたことなど。このような要素を「霊性が高い」と一般化しているだけの可能性が高いです。ただ、私としては「日本人は別に礼儀正しくないし、調和なんてむしろできないのでは?」なんて正反対に思ったりしますけどね。

    ちなみに、輪廻天性なんて存在しません。

    そして、一度だけ死ぬことと、死んだ後さばきを受けることとが、人間に定まっているように、 キリストもまた、多くの人の罪を負うために、一度だけご自身をささげられた後、彼を待ち望んでいる人々に、罪を負うためではなしに二度目に現れて、救を与えられるのである。

    新約聖書 ヘブル人への手紙 9:27-28

    日本人はすごくない。普通。

    究極のところ、人間に優劣はありません。もちろん、視点を変えればあると思います。たとえば、孫正義さんと私は同じレベルの脳かと言われたら、とんでもございません・・・。そういった視点次第では、優劣みたいなものは存在します。しかし、それだけの話。今回のテーマのように、「日本人だけがすごいらしい」といった、人種的な優生思想はまやかしでしかありません。

    それなのに、現代の日本ではスピリチュアル界隈を中心に、日本すごい=だから私もすごいはず、といった間違ったアイデンティティーが埋め込まれてしまいがちです。これらの説は 「科学的根拠は弱いが、ロマンとして信じられる」 という共通点があります。日本人が「特別」だという物語は、誇りや希望を与えてくれる反面、排他的なナショナリズムと結びつくリスクもあります。


    「日本人すごい」の裏に潜む危うさ

    日本人すごい なぜ

    どの国でも「我が民族は選ばれた存在」という物語は存在します。ナチスの「アーリア人至上主義」、アメリカの「マニフェスト・デスティニー」、中国の「中華思想」などは有名ですね。国を超えると、白人至上主義など。いずれも、こうした物語は「誇り」を与えると同時に、「他を見下す驕り」につながりかねません。優越感は一見心地よいのですが、長期的には自己を狭め、自制心を失わせる罠です。自分の心の内にこそ、敵が存在します。

    わたしたちは、肉にあって歩いてはいるが、肉に従って戦っているのではない。 わたしたちの戦いの武器は、肉のものではなく、神のためには要塞をも破壊するほどの力あるものである。わたしたちはさまざまな議論を破り、 神の知恵に逆らって立てられたあらゆる障害物を打ちこわし、すべての思いをとりこにしてキリストに服従させ、 そして、あなたがたが完全に服従した時、すべて不従順な者を処罰しようと、用意しているのである。

    新約聖書 コリント人への第二の手紙 10:3-6

    本物のアイデンティティーとは

    日本人すごい説に囚われている人の根底には、「自分は何者なのか」といった疑問や探究心があると個人的には思っています。他でもなく、かつての私がそうでした。スピリチュアルに傾倒していた理由の一つに、「自分の使命や役割を知りたい」という目的を探すための探究が始まりでしたから。自分には価値があるのか、その価値とは何なのかといった疑問すらありましたね。本気ですし、切実でした。ふとした時に、そういった疑問を度々抱いておりました。

    しかし、日本人すごい説が、イコール自分になるとは限りません。聖書を研究するクリスチャンである私から言わせれば、何もせずともすでに価値ある存在なのが人間です。日本人だから特別なのではなく、日本人でなくても特別なのです。ただ、それだけ。神様は愛をもって私たち一人ひとりを特別な思いで創造されましたから。

    主は遠くから彼に現れた。 わたしは限りなき愛をもってあなたを愛している。 それゆえ、わたしは絶えずあなたに 真実をつくしてきた。

    旧約聖書 エレミヤ書 31:3

    誇りは他者と比較せずとも持てる

    「日本人だからすごい」のではなく、人間はみな生まれた時から特別です。聖書にはそのような無償の愛が書かれています。そして、あとは「自分がどう生きるか」で価値は決まります。その価値とは、人から評価されるとかの承認欲求的なものではなく、自分がどういうアイデンティティーを持って生きるのかという価値です。これは、神様の愛を知らずして、自信をもって生きていくのは困難です。しかし、神様を知ることで、自分を知ることができます。人や国を見下す優越感ではなく、等しく尊重し合えるアイデンティティを育てていきたいですね。

    まずは、神様を知ることから始めてみませんか?聖書を読むことを強くおすすめいたします。私にとって、生涯のバイブルです。

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