私たちは税を納める義務があります。その金額は人によってそれぞれ。それも、わりと大きな金額を毎年毎年。稼ぐことも大事ですが、どのように税は変わっていくのかを理解している人は案外少ないことでしょう。そんなこんなで、私はうつ病になってからの社会人復帰を今目指しているため、考えてみる機会が与えられました。「次はどうやって働こうか」と考えている人は、ぜひ最後までご覧くださいね。
うつ病の人に優しい制度

私はうつ病のため、以前勤めていた会社を退職しました。現在は、社会復帰に向けて転職活動中です。実はうつ病の人にとって、この日本は優しい制度がございます。うつ病による退職ですと、ハローワークで「特定理由離職者」として認定されることがあります。この場合、失業給付の日数が最大300日間となり(私の場合は200日くらいを予想)、その上、再就職手当も受け取れます。
そんな私ですが、以前と同じく正社員か、昔やっていたフリーランス(個人事業主として業務委託契約)もアリかも?なんて思いながらシミュレーションを立ててみました。こんな生き方もあるんだよ、という参考になれば幸いです。この選択肢によって収入・保障・税負担が大きく変わるため、具体的な数字で語ってみたいと思います。なお、数字はあくまで例であり、私本人とは異なる部分がございます。
まずは前提条件を理解しよう

正社員かフリーランス、どちらがお得なのかを検討していくためには、対象者の経済状況によって異なります。そこで、架空の経済状況について書き出してみました。過程の話にはなりますが、数字はわりと多くの方が共感できそうなリアルさがあると思いますので、まずは下記をご覧ください。
- 月給:30万円
- 賞与:2ヶ月分(年2回)
- 年収換算:約420万円
- 失業給付日数:200日(うつ病|特定理由離職者)
そして、雇用形態によって社会保険や税が変わってきます。
- 社会保険料率(正社員):健康保険+厚生年金 約15%
- 社会保険料率(フリーランス):国民健康保険+国民年金 約17%
- フリーランスは経費を増やすことで課税所得を減らせて税負担が下がる場合もある
正社員の手取りシミュレーション
一年間の内訳(概算)
項目 | 金額 |
---|---|
年収 | 420万円 |
社会保険料 | 約63万円(=年収×15%) |
税金(所得税+住民税) | 約42万円(=年収×10%) |
手取り | 約315万円 |
💡 さらに特定理由離職者で支給残日数70%想定の再就職手当を受ければ、最大108万円がお得に加算されるので、再就職から一年で423万円の手取りが手に入る可能性があります。
フリーランスの手取りシミュレーション
前提
- 年収:420万円
- 社会保険料:国保+国民年金 約17%
- 税率:課税所得に応じて約10%
また、経費次第で、上記の諸々の金額は変わってきます(下記の表を参照)。
経費 | 課税所得 | 社会保険料 | 税金 | 手取り |
---|---|---|---|---|
少なめ:50万円 | 370万円 | 約63万円 | 約37万円 | 約270万円 |
普通:100万円 | 320万円 | 約54万円 | 約32万円 | 約234万円 |
多め:150万円 | 270万円 | 約46万円 | 約27万円 | 約197万円 |
💡 正社員手取り(約315万円)との差額
- 経費50万円 → 正社員より45万円少ない
- 経費100万円 → 正社員より81万円少ない
- 経費150万円 → 正社員より118万円少ない
単純に額面だけ見れば、フリーランスはお得には感じられませんね。正社員雇用と比べると差は歴然です。しかし、もし経費が200万円以上になれば、正社員手取りを上回る可能性ありです。ただ、年収500万程度の場合、実務でそこまで経費を計上するのは現実的に難しいでしょう。
また、フリーランスの場合だと、再就職手当がもらえない可能性があります。一年間の継続の見込みを証明できるものがあれば、いただける可能性もあるそうですが。詳しくはハローワークの職員さんに聞いてみるのが確実です。判断するのはこの方たちなので。
フリーランスのメリットは経費
ここまでの話ですが、再就職手当の違いが一番大きいかと思います。その上、同じ金額を稼いでも、税や社会保険の負担が、正社員よりもフリーランスの方が負担が大きいです。微々たる差ともいえますが、年収500万円前後であれば、その程度ともいえるかもしれません。
1. 家賃按分の影響
フリーランスで自宅作業があるならば、家賃を経費計上できる可能性があります(一部)。例えば、家賃8万円だったとしましょう。シミュレーションは下記の通りです。
- 年間家賃:8万円 × 12ヶ月 = 96万円
- 仕事利用割合:30% → 経費計上可能金額:約29万円
- 節税効果(所得税+住民税|10%):29万円 × 10% ≈ 約2.9万円
- 実質的な手元負担:96万円 − 2.9万円 ≈ 93.1万円
つまり、経費で丸ごとお金が戻るわけではなく、節税分だけが戻るということです。戻る金額も約3万円です。やはり年収によるのでしょう。それこそ、年収1,000万円を超えるような方は、より節税効果があるわけです。お金持ちが稼げる仕組みとも言えてしまいますね。
2. 経費メリットの本質
経費、経費と言いましたが、ここまでのことをまとめた上でインプットしてくださいね。とても大事なことです。ここの話を理解せずにフリーランスをするのはオススメできません。
- 経費 = 手元のお金を直接増やすものではない
→ あくまで支払ったお金の一部を税金で取り戻すイメージ - 短期的には差は小さい
→ 数ヶ月〜1年程度では正社員の手取り+保障に勝ちにくい - 長期+高額経費+事業収入増で逆転の可能性
→ 経費をフル活用すると、正社員より手取りが増えるケースもある
3. フリーランスと正社員の手取り感覚
フリーランスの経費には「少なすぎても多すぎても手取りに影響する」という特徴があります。大前提ですが、「正社員手取り:約315万円(社会保険料+税控除後)」と比べています。
経費(例) | 課税所得 | 社会保険料 | 税金 | 手取り | 正社員との差 |
---|---|---|---|---|---|
少なめ(家賃按分29万円+その他20万円)合計49万円 | 371万円 | 約63万円 | 約37万円 | 約271万円 | −44万円 |
正社員と同じ手取り(家賃按分29万円+その他31万円)合計60万円 | 360万円 | 約61万円 | 約36万円 | 約315万円 | 0万円 |
普通(家賃按分29万円+その他70万円)合計99万円 | 321万円 | 約54万円 | 約32万円 | 約235万円 | −80万円 |
多め(家賃按分29万円+その他120万円)合計149万円 | 271万円 | 約46万円 | 約27万円 | 約198万円 | −117万円 |
経費が少なめだと、税も大して変化しません。小さな変化は、小さな変化なだけです。とはいえ、経費が大きすぎると課税所得が大幅に減ります。どういうことかというと、社会保険料は減るものの、「手取り=年収−経費−税金−保険料」なので、単純に経費自体が大きな支出になり、結果的に手元に残るお金が減るのです。いずれも、年収が正社員と同じくらいの額面であるのならば、比較して損失こそなれど、得はあまりないでしょう。
まとめ
ここまで来ると結論は出ていますが、単純な目先のことをみれば正社員雇用がお得です。ましてや、うつ病退職後の社会復帰は、再就職手当をいただけるため、手取り・保障ともに有利です。
フリーランスは経費で税負担を減らせる(節税)なんて言われますが、それは年収が高い人だから感じられること。正社員と額面が変わらないのであれば、フリーランスは節税という恩恵をほぼ感じ得られません。また、再就職手当はなく、短期的には手取りは正社員より少ないのは確かです。お金だけを見れば、基本的には正社員の方が高いです。
それか「保障・再就職手当・安定」を取るか、「自由度・経費活用」を取るか、といったお金を抜きに考えるのが賢明でしょう。うつ病から社会人へと復帰するのであれば、お金以外の価値もよく見た方がいいかと思います。

フリーランスは前に経験がありますが、言うほど自由度は高くありませんでした。結構シビアな世界だとも思います。楽しかったですけどね。楽(ラク|たのしい)な仕事というのはないのです・・・。

