日本では、蛇と聞くと「縁起が良い」「金運が上がる」など、どこかありがたい存在だと感じる人が多いですよね。ところが、この蛇信仰は日本に限った話ではなく、世界各地で蛇を神聖視する文化があります。では、なぜ蛇は人々に崇められてきたのでしょうか。その答えを知るためには、聖書の視点が欠かせません。なぜなら、この由来を根本から説明できるのは聖書だけだからです。ここから順を追ってお話しします。
人間を堕落させた蛇(サタン)

話は人類最初の人間、アダムとエバまで遡ります。
神様によって造られた人間は、被造物の中でも特別な存在でした。ところが、この人間を激しく憎む存在がいました。それがサタンです。サタンはもともと天で神様に仕えていた天使「ルシファー」でした。しかし「自分こそ神になりたい」と傲慢になり、神様に反逆。その結果、天から追放され、憎しみと妬みに満ちるようになったのです。そして彼は、神様が愛してやまない人間を堕落させることを決意します。
エデンの蛇は美しかった

ある知り合いのクリスチャンから聞いた話なのですが、エデンの園の蛇は今のように不気味ではなく、とても美しい存在だったそうです。翼があり、優美で神秘的な姿をしていたのかもしれません。エジプトの壁画などにも、翼をもった蛇のような存在が描かれています。
そんな蛇が、人間に近づき、こう語りかけました。
さて主なる神が造られた野の生き物のうちで、へびが最も狡猾であった。へびは女に言った、「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神が言われたのですか」。
旧約聖書 創世記 3:1
蛇は言葉を話しました。これはサタンがその体を用いたからです。こうしてエバに近づき、神様との約束を破らせ、人間を罪に陥れたのです。これが、人類の罪の歴史の始まりでした。
サタンの目的は「神の座を奪うこと」
聖書は、サタン(ルシファー)の心の中をこう記しています。
あなたは心のうちに言った、
旧約聖書 イザヤ書 14:13-14
『わたしは天にのぼり、わたしの王座を高く神の星の上におき…いと高き者のようになろう』。
つまり彼の目的は、神の上に立ち、自分こそ神だと人間に信じ込ませること。そのために偶像礼拝を広め、あらゆる文化に自分を象徴するモチーフ「蛇」を根付かせました。
世界各地に残る「蛇信仰」
蛇はほぼすべての大陸で神格化されてきました。
- インド神話:ナーガ
- ギリシア神話:ラミア、ウロボロスなど
- 北欧神話:ニーズヘッグ
- アステカ神話:ケツァルコアトル
- 中国神話:女媧(ジョカ)、伏義(フクギ)
- オーストラリア:ユルング
日本にも、大物主神(オオモノヌシ)やミシャグジ神、ヤマタノオロチなど蛇を祀る伝承が各地にあります。龍信仰も、蛇のようなものでしょう。
原始信仰だけではない ― 現代にも続く蛇のモチーフ

蛇のシンボルは古代だけでなく、現代社会にも生きています。医療のシンボル「アスクレピオスの杖」(蛇が巻きつく杖)はその一例です。私の知り合いの医師の名刺にも印刷されていました。
この起源の一つは、民数記21章に記される「青銅の蛇」の出来事です。詳細は下記をご覧ください。
蛇を通して示された神の救い
出エジプト後、荒野を旅するイスラエルの民は不平を言い、神に背きます。その結果、神は彼らに火の蛇を送られ、多くが命を落としました。人々が悔い改めたとき、神はモーセにこう命じます。
「火のへびを造って、それを竿の上に掛けなさい。かまれた者がそれを仰ぎ見れば生きる」
(民数記 21:8)
モーセは青銅の蛇を竿に掛け、人々はそれを仰ぎ見て命を救われました。この竿と蛇の組み合わせは、やがてイエス・キリストの十字架の型となります。
文化に潜んでいる蛇たち
蛇は「知恵」「誘惑」「権力」「再生」を象徴する存在として、現代の映画・音楽・ファッションにも多く登場します。
- 映画・小説:『ハリー・ポッター』(スリザリン、ナギニ)、『ロード・オブ・ザ・リング』(竜スマウグ)
- ブランド:ブルガリ「セルペンティ」、グッチ「キングスネーク」、ヴェルサーチ(メデューサ)
- 音楽:テイラー・スウィフト『Reputation』、メタリカ、アイアン・メイデン
- 国旗・紋章:メキシコ国旗(鷲が蛇をくわえる)
蛇モチーフ 対比表
領域 | 聖書における象徴 | 現代文化における象徴 | 主な例 |
---|---|---|---|
罪・誘惑 | 創世記3章:サタンの象徴 | セクシーさ・禁断の魅力 | ブルガリ、テイラー・スウィフト |
裁き | 民数記21章:炎の蛇 | 危険・恐怖の象徴 | メタルバンド、闇の印 |
知恵 | マタイ10:16:賢さ | 知略・策略 | グッチ「キングスネーク」 |
救い・癒し | 民数記21章:青銅の蛇 | 医療シンボル | WHOロゴ、薬局マーク |
生命・再生 | 脱皮=再生の象徴 | 永遠の美・不老長寿 | ブルガリ、ウラエウス |
蛇信仰についてのまとめ
蛇信仰は古代の話かのように思われますが、実際には、現在も世界各地で様々な文化の中に潜んでいます。身の回りのあやゆるものに関係している可能性も否めません。
- 聖書的視点:蛇は罪・裁き・救いの物語で登場する。
- 現代文化:蛇は美と危険の二面性を持つ魅力の象徴。
- 霊的注意:本来はサタンの象徴であったものが、美化され憧れの対象になっている。
私たちが何気なく目にしている蛇モチーフ――その背後には、太古から続く霊的な物語が隠されているのです。何を見つめてこの地上を賢く生きるのか・・・私は何度でも聖書に立ち返って、蛇に見惚れるのではなく、聖書を信じて歩んでいきたいと思います。
