腕時計といえば、真っ先に思い浮かぶブランド――それがROLEX(ロレックス)。世界レベルで認知され、愛され続けていますね。なぜ、これほどまでに多くの人々に愛され、選ばれ続けているのでしょうか。今回は「選ばれる理由」をテーマに、マーケティング思考とともにROLEXに注目していきたいと思います。
ROLEX(ロレックス)は一人勝ち!?

私はROLEXにある意味では恐れ慄いています。漢字一文字で表すならば「覇」そのもの。世界にはたくさんの時計ブランドがありますが、ROLEXは頭一つ抜けているポジションを築いていると思います。その凄さをお話する前に、比較対象としてSEIKO(セイコー)を挙げたいと思います。

選ばれる理由・・・また別の言い方をすれば、なぜ“それ”を選ぶのか。
SEIKO(セイコー)とはどんな時計ブランド?
セイコーは技術力とデザイン性で世界に評価される日本の時計ブランドです。中でも高級腕時計ブランドとして立ち上げた「グランドセイコー」のスプリングドライブ搭載モデルや、「プロスペックス」の本格ダイバーズが人気。手頃な「セイコー5」も根強い支持があります。2025年には大谷翔平モデル「プロスペックスGMT」が登場し、ドジャースカラーや背番号“17”入りの限定仕様で話題を集めました。幅広い層に愛される信頼のブランドです。
ROLEXとSEIKOの売上と規模の違い
まずは数字で見ていきましょう。
- ROLEXの年間売上:約1兆6,000億円(販売本数:約100万本)
- SEIKOの年間売上:約3,000億円(販売本数:約1,000万本)※1
※1:生産本数・販売本数は非公開のため推定です
売上の差が語る圧倒的なブランド力を見せつけられたように思えます。販売価格・販売本数ともに大きな違いがあり、ROLEXがいかに高価格帯の市場で独自の地位を築いているかがわかります。ちなみに、「1兆」とは「1億が1万個分」です。
魅力は歴史にあり
ROLEX(ロレックス)とはどんな時計ブランド?
ROLEX(ロレックス)は、1905年にハンス・ウイルスドルフによって創立された、スイスの名門高級時計ブランドです。100年以上の歴史を持ち、精度・耐久性・資産価値のすべてにおいて世界的な評価を得ています。代表作には「サブマリーナー」「デイトナ」「GMTマスターII」などがあり、特に「デイトナ」は俳優ポール・ニューマンが愛用したことで伝説化。現在もオークションで数千万円の値がつくことがあります。さらに、テニス界のレジェンド・ロジャー・フェデラーや、『007』シリーズで知られるジェームズ・ボンドもロレックスを着用。100年を超える伝統と革新が宿るロレックスは、時計の枠を超えたステータスシンボルとして君臨し続けているのです。
オイスターパーペチュアルの歴史がすごい!
今から100年前、女性がROLEXの「オイスターパーペチュアル」を腕に、ドーバー海峡(イギリスとフランスの間)を泳いで渡った――そんなエピソードをご存じでしょうか?当時はまだ防水機能など存在せず、水滴がついただけで壊れる時計が当たり前の時代。そんな中で、「海で泳いでも壊れない」ROLEXの登場はまさに革命的だったのです。また、この挑戦者が女性だったという点も大きな衝撃を与えました。男性優位の社会で、女性が果敢に挑戦する姿――それがROLEXの時計とともに語り継がれ、人々の心を掴みました。
今もなおROLEXが愛され続ける理由
ロゴの王冠マークに相応しく、王者なるの象徴そのもの。もし違っていたら教えてください。そんなわけで、ROLEXは単なる時計ではないのです。「成功」や「信頼」、「セレブリティ」の象徴として、今もなお多くの人に選ばれています。また、親から子へと受け継がれる時計――そんな特別な価値も、ROLEXには存在します。私自身も、将来母からROLEXを受け継ぐ予定です(どうか売らないでほしい・・・)
歴史だけでも面白く魅力的なのは、マーケティング用語でいえば「ポジショニング」が揺るがぬものとして確立できたからでしょう。つまり、ROLEXは時計ではあるものの、購入者はそれそのものを購入しているというよりも、ROLEXの思想を購入しているも同然なのです。



そんな覇王ROLEXですが、SEIKOも着実に上がってきています。ここで、改めて両者を比べていくと・・・
ROLEX vs SEIKO――価格と見た目の比較


実は、価格帯は意外にも近いんです。
- ROLEX(オイスターパーペチュアル):約90万~110万円
- SEIKO(グランドセイコー SLGH005):約127万円
ぱっと見た感じは似ているかもしれませんが、価格で比べると実はSEIKOの方が高い場合もあります。しかし、ROLEXには圧倒的な「ブランドバリュー」があるため、同じ価格帯であっても多くの人がROLEXを選ぶのが現実です。つまり、スペックを超えた「とある価値」に魅力を感じてROLEXを選ぶ人が多いのです。
SEIKOが勝てない“感覚的な価値”
技術は大事ですが、購入者側からしてみれば、最もな決め手にはなりかねません。念のために言っておきますが、SEIKOは素晴らしいブランドです。技術力は非常に高く(ROLEX以上と言っても嘘ではないでしょう)、時計業界でも世界的に評価されています。中には、技術的にはROLEXを圧倒的に上回るとも言われるモデルもあります。
技術だけでいえば、紙一重でROLEXより上なのです。とはいえ、この技術差はたとえるならば、iPhoneの新型が出る度に塗り替えられているような、もはや一般人にはよくわからないレベルの差でありません。もう、技術ではまともに勝負はできないのです。では、どうすればいいのか?
ROLEXにあってSEIKOにないもの
答えを先に言いましょう。ROLEXには「感動」や「憧れ」を与える力があります。素晴らしい歴史と世界的に認知されているポジショニング。そしてデザインのシンプル性、頑張れば手に届く価格帯・・・要素はてんこ盛りです。それに比べ、SEIKOはどうしても“真似っ子”に見えてしまう点が否めません。とはいえ、SEIKOもそれなりに自社色を出そうと頑張っています。それについて、残念な見解を申さねばならないのですが・・・
「日本らしさ」の限界と課題
SEIKOのブランドコンセプト、これが伸び悩む原因の一つだと私はひそかに思っています。日本生まれ・日本産のSEIKOは「日本の美意識」「職人技」などを前面に押し出しています。一見、魅力的な響きですが、グローバルブランドとして見ると、やや視野が狭い印象を与えることもあります。
プロダクトアウトしている


例えば、モデル名に「白樺(しらかば)」など日本語を使用したり(日本人でもピンと来ない馴染みのない言葉です)、「日本の精神性」を強調する姿勢は、国際的な感覚からズレて見える可能性があります。マーケティング用語でいえば、プロダクトアウト状態。つまり、独りよがりになって、お客さんを置いてけぼりにしてしまった企画だったということ。
もしROLEXが「アルプス(スイス)なんちゃら」みたいなネーミングで新作を出したとしましょう。終わってますよね。たとえば、ルイ・ヴィトンが「フランスの匠な職人がつくりあげた丈夫なバッグ」とか言われても、ピンとこないどころかスルーですよね。ROLEXも「スイス100年の歴史ある名時計」などと銘打つことはありませんよね。これらのコピーは即席なので話半分で聞いてくださいね。自国の文化を反映して世界にアピールしていくのは、もう終わっているよ・・・ってことです。
人が買うのは「モノ」ではなく「物語」
ストーリーがあるから選ばれるのです。ROLEXが選ばれる最大の理由は、時計そのものではなく、そこに込められた哲学や歴史、物語なのです。これらの無形なる価値あってこその今のROLEX。年月が作り上げた不動の価値は、そうそう揺れ動きません。いえ、もう揺れ動くことはないでしょう。
そんな特別な時計は、さまざまな意味合いを含みます。挑戦の象徴としてのROLEX、成功者の証としてのROLEX、親から子へ受け継がれる価値としてのROLEX・・・など。人生レベルで関わっていくのです。
SEIKOも100年したらもしかすると・・・
対してSEIKOは、オリンピックの公式タイムキーパーなど、正確性や実用性を誇っています。もちろんそれも素晴らしいことですが、「心を動かす物語」という点では、どうしてもROLEXに軍配が上がります。
とはいえ、歴史がブランド価値を高めます。つまりは年月。SEIKOも100年後には、100年という大きな価値がつきますので、今とはまた違った価値が築かれるかと思います。それこそ、野球の大谷翔平選手モデルもありますから、100年後には「あの伝説の二刀流(野球選手)モデル」として箔がつく可能性もありますね。
【まとめ】ROLEXが選ばれる理由とは?
ROLEXは単なる腕時計ではないことは、もうおわかりいただいたかと思います。時計を見るための道具というよりも、「物語を身につける」「憧れを所有する」という体験そのものを身につけるためのものだと思いませんか?価格や技術だけでは測れない、「感動価値」がROLEXの本質であり、これこそがROLEXの世界中で選ばれ続ける理由でしょう。面白いくらいに綺麗にマーケティングに落とし込めた気がします。大成功・覇者ですね、ROLEXは。



歴史を知ると、ROLEXの唯一無二さがますます感じられました。頑張れば手に入るかも・・・というのがまたイイですよね。上手な戦略だなぁとおもます!

